【視点】 G20 新興国リスクに一定の配慮もQE縮小は継続

2014年02月21日 20:27

第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 桂畑誠治氏
 
G20会見で新興国から先進国への批判発言が出ても市場の反応は限定的
 
 G20(主要20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議声明)を前に、すでにブラジルやインドといった新興国から、テーパリング(緩和縮小)を開始した米国に向け、一定の配慮を求める声が上がっている。そうした内容がG20声明に多少は反映されるだろう。去年に新興国リスクが注目された局面におけるG20声明でも、米国はオープンに金融政策を運営し、新興国は構造改革を進めるとしていた。今回も同様の内容が声明に盛り込まれると思う。
 ただ、QE(量的緩和)縮小が止められるわけではない。また、テーパリング縮小を意識した姿勢を示すと、後手に回り対処する状況に陥る可能性がある。これまで言われていたように、新興国市場の大きな混乱が米国にも波及し、米経済見通しが著しく悪化すれば縮小の小休止、あるいは緩和の再拡大もありえると述べることは考えられる。もっとも、実際に政策変更を余儀なくされるような状況への対応を意識しながらも、他国重視の態度を示すことはありえない。国内の状況をみて対応を進めるのが、日銀もそうであるように金融政策の基本。突然の金融政策姿勢の変更は、市場にインパクトを与えてしまうことにもなる。
 両者の意見を反映し、先進国は金融政策の透明性拡大、新興国は構造改革といった、それぞれがやらなければならないことを明示して、これらを進めることで経済成長を維持するといった無難な声明にとどまると思う。先進国はどれだけわかりやすく金融政策を行っていくかを説明し、新興国もそれ以上のことを現時点で求めることはできないだろう。成長目標を定めるなどとの報道もあったようだが、各国ベースにしろ、世界成長の数字を定めるにしろ現実的ではなく、あまり意味もないし合意は難しい。
 いちばんの失望は、対立だけが目立ち、適切な合意がなされないこと。その場合は市場も大きく反応すると思うが、それはありえないだろう。そうしたリスク以外にサプライズはなさそうだ。声明合意後の会見で、ブラジルなどから自国寄りの発言が聞かれるかもしれない。しかし市場がそれに反応することはないだろう。むしろ批判を繰り返すより、どのような改革を行うか表明したほうが、それぞれの新興国にとってもメリットがあり、市場は好感すると思う。
 
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