【視点】 春の米指標に期待、FRBは金利急上昇の抑制に腐心

2014年03月12日 19:56

みずほ総合研究所 市場調査部 シニアエコノミスト 小野亮氏
 
ふたつの悪材料こなし春の米指標にさらなる期待、FRBは急激な金利上昇の抑制に腐心か
 
 先週末の米雇用統計は良好な結果となった。そもそも1-3月期の米経済指標には、昨年終盤に指標を加速させた要因のはく落による下押し圧力が働いている。去年の後半よりさえない指標結果が続いてもおかしくない。悪天候の影響も加わって、正しい姿もわかりにくい。こうしたなかで好調な雇用指標が出てきた。春先のより一段の伸びが期待できる。
 良い指標が続くと、市場は金利上昇かといった状況になってくる。FRBは、それを望まない。仮にペントアップ・ディマンド(景気回復時に、それまでの手控えの反動で一気に需要が高まる状態)が出てきても、一巡後に強さが残るか不透明。強気一辺倒にはなれない。FRBは自信を深めるだろうが、市場が冷静さを保つように発言してくるだろう。QE3のテーパリングは続くが、会見やフォワードガイダンスを通じ、市場と注意深くコミュニケーションを図っていくと思う。
 これから寒波の影響がどんどん晴れていく期待があって、市場は力強いリバウンド(米債については金利上昇)を待ちわびている。しかし昨年の5月から9月にかけての金利上昇局面と異なるのは、多くの参加者がすでに上昇を想定したポジションになっている面があること。昨年と違い、急激な巻き戻しにより一気に金利が上昇することはないとみる。ただ、フォワードガイダンスがむしろ金利上昇を招くといったような指摘も、BIS(国際決済銀行)のアナリストなどから寄せられていた。こうした部分をうまく説明して市場を安定させることができるか、FRBのコミュニケーション能力が問われる。