【視点】 初の「午年円安」となるか
2014年02月17日 18:47
三井住友アセットマネジメント理事 チーフエコノミスト・宅森昭吉氏
ドル円は上昇波動いったん完成も、初の「午年円安」実現するか
10-12月期GDPの発表値は、予想レンジを大きく外れる弱さだった。だが、個人消費と設備投資が、リーマンショックの影響を引きずる季節調整でぶれたというテクニカルな要因がかなり効いている。それがなければ0.8%ポイント数値が上乗せされ+1.8%となり、ショッキングな数字ではない。むしろこれで1-3月期以降、特に4-6月期の数字が高めに出てくる可能性が強まった。GDPの内容がそれほど悪くないと認識されていけば、市場は株価の上昇や円売りといったリスク選好の動きを次第に強めていくとみている。
また、様々な統計からしても現況がそれほど悪いとは思えない。日銀短観では12月調査における中小製造の景況指数が21年10カ月ぶりにプラスに転じている。また、1月の景気ウォッチャー調査の現況判断が低下したことだけが注目されているが、資料をよくみれば季節調整値は57.4となっており、統計史上で2番目に大きな数値。足元の景況のレベルはかなり高いといっていい。もちろん4月の消費増税の影響は出てくるが、それは覚悟のうえだろう。初詣の参拝客数をみても、97年の消費増税の際は減っていたが、今年は増えており、心構えができていることの表れ。慎重な姿勢であれば、ひどいことにはならないと思っている。
ただ、日本の13年度のGDP見通し2.7%は達成できないだろう。そうなると金融緩和を続けざるをえない。米国のテーパリングがとん挫しなければ、通常は円高になりやすい午年が、初の「午年円安」となる可能性は高い。ドル円は105円台まで上伸し、いったんテクニカルな上向きの波動が完成してしまったことが上値抑制要因となっているかもしれない。しかし日経新聞を円高・円安の記事の量を半月区切りで比較すれば、足元では5分5分。市場の動きに1カ月先行するところから推察すると、円高にはならず、しばらく100円台前半のボックス圏でもみ合いになるとみている。