【視点】 ドル円は米回復とともに103円方向へ
2014年02月19日 19:58

三菱UFJ信託銀行 資金為替部 為替グループ グループマネージャー 市河伸夫氏
G20でテーパリングと新興国リスクの議論あっても、市場の乱高下はない
日銀の貸出支援拡充への株高・円安の反応は、前日の弱いGDPを受けて株が売られていたことに対する反動という部分も大きかったと思う。しかし依然として米景気の不透明感の影響で、日経平均株価の15000円は重そうだ。
G20では、米テーパリングについては、すでに昨年6月に一度、実際に行われる前に金融市場でリスクを織り込む展開があった際に議論されている。実際にテーパリングが昨年12月に開始されてから初めてのG20でもあるため、再び以前と同じ議論を行い、蒸し返される可能性はある。しかし1月末にもテーパリングによる新興国リスクを経験しており、現在は小康状態。ルー米財務長官の見解も文章ですでに発表されている。議論になっても、市場が乱高下するようなことはないだろう。
米国も新興国も主張はしっかり述べるかもしれない。イエレン米FRB議長は、雇用状況や寒波の影響を見極めなければならないが、基本的にテーパリングを粛々と進めるとするだろう。一方で新興国は、先日のトルコのようにドル資金が急速に流出する可能性もあるため、米国に注意を喚起するといったエール交換はあると思う。しかし今回はシドニーでのG20で、開催国のオーストラリア人がそのような点で激しい議論に持ち込もうとする気はしない。スティーブンスRBA総裁は強めな発言をすることが少なくないものの、基本的に自国通貨を下げたい立場にあるため、ドル高に進みやすいテーパリングはむしろ歓迎だろう。
日米に関しては、日本では弱いGDPが発表されて、すでに今週の頭までで悪い材料は織り込んだ。日本の純輸出が増える見通しも立たない状態。一方で現在あまり状況が良くない米国で、12月、1月と弱かった自動車販売などが回復していけば、日本も先行きの暗さが晴れていくだろう。現時点では、ドル円は最悪の状態を織り込み102円付近でもみ合い。3月ぐらいから状況改善につれて103円方向とみている。少なくとも3月末には、米ISMなどセンチメント系の指標が改善してくると思う。
