【視点】 ウクライナはこう着か緊迫、スキッと晴れない

2014年03月18日 18:22

ニッセイ基礎研究所 経済研究部 シニアエコノミスト・上野剛志氏
 
ウクライナはこう着か緊迫、スキッと晴れない
 
 ウクライナ情勢は一つのヤマ場。クリミア住民投票が圧倒的多数でロシア編入を支持したところまでは従来からの市場の想定通りだろう。その後の米国の追加制裁や欧州の制裁が思ったより限定的で、少しリスク回避は緩まった。きつい制裁が行われていたら、ロシアもきつく出てきて、事態が緊迫化する可能性があった。しかし第一手は思ったより軽微な制裁だった。とはいえまだ架橋の段階。プ―チン大統領の演説の内容を見極めたいというところが当然で、市場はやや戻したところでこう着感を強めつつある。
 ただ、最近NY金相場がかなり上昇しているものの、ドル円でそれほどリスク回避の円買いが進まない。水面下で円安圧力が働いており、中長期的な先高観や日本の貿易赤字、日銀への追加緩和期待などがまだ活きている気がする。武力介入が現実化しないかぎり、ドル円の下値も底堅いと思う。もっとも不透明感はやはり濃く、一方向へ強くベットできる市場参加者もいない。クリミアの問題がスキッと晴れる展開が当面ないことは確か。こう着するか、緊迫化するかどちらかだ。こうしたなかで緊迫の度合いを推し量しながら売買する状態が続くだろう。
 現状、市場ではウクライナを焦点とする比率が高まっている。だが、嫌な材料が重なると、さきほど下値は堅いとしていたドル円も、一段下での推移となり得る。中国や他の新興国の不安、また、米経済指標の減速が、寒波によるものという仮説に疑義が生じるようなデータが出てくることがリスクとなる。