株式投資の世界を一変させた救世主!
投機がグレアムによって投資になった
投資の分野で歴史上最も卓越した洞察力を有した人物の集大成
ベンジャミン・グレアムがウォール街で働き始めた1914年当初、米国の金融業界は法的統制のなされていない、言わば無法地帯であった。当時は、各種の規制法案に関する概念の構築が始まったばかりであり、SEC(証券取引委員会)が設立するまでさらに20年を要し、多くの企業は詮索好きな外部の人間に対して財務情報を隠しているような状況であった。
また、私たちが今日認識しているような証券アナリストは存在せず、当時のアナリストは「診断医」などと呼ばれていたが、それほど分析らしいことはしていなかった。当時の投資家はマーケットの「雰囲気」に合わせることを重視し、その多くは財務諸表に目を通すことなどほとんどなかった。
客観的な事実の調査や分析が欠落していることに愕然としたベンジャミン・グレアムは、これらを一変することを決意し、そしてついには現代の証券分析の礎を文字どおり創造することとなった。
本書は、ファイナンスの分野において歴史上最も卓越した洞察力を有した人物のひとりであるグレアムの半世紀にわたる證券分析のアイデアの進化を示す貴重な論文やインタビューのコレクションである。
序文 (ジェイソン・ツバイク)
本書の目的は、証券分析に関してグレアム自身が過去に寄稿した数々の文献を、はじめて一冊の書としてまとめることにある。また、本書は二〇〇九年出版されたグレアムおよびドッドの大著『証券分析』第六版の手引書として活用することにも役立つことであろう。一九三二年から一九七六年に及ぶ、グレアム自身の考えの進化を通して、私たちは、いかに証券分析が、文字どおり家内工業的職業から専門的職業として進化してきたのかを確かめることができる。グレアムは、荒涼とした時代において、言わば株主の権利を訴える声なき声であった。彼は強気相場の危険性を警告し、弱気相場においては投資機会の到来を宣言する指導者であった。彼はまた、株式の新たな評価方法を模索するために心血を注ぎ、證券分析における科学的な手法の強固な基盤を築くことを決心していた深遠なる思想家でもあった。さらに、彼はそのビジネス人生において、常に自身よりも顧客の利益を優先する誠実さや真摯さのモデルとされた存在でもあった……
本書への賛辞
「本書を堪能し、学んでほしい。あなたの宝物になるだろう」――ジョン・C・ボー グル(バンガードグループ創業者兼前CEO)「もしも若さというものが、創造力、新しいアイデアに対する興奮、学ぶことへの渇 望などを基準に測ることができるならば、多くの輝かしい実績を持つ優れた投資家の 中でも、ベンジャミン・グレアムは、たとえ彼が80歳代前半であったとしても、その なかで最も若いという結果になるだろう」――チャールズ・D・エリス(CFA、『敗者 のゲーム』の著者)
「30年以上にわたる文献を集めた本書は、この先見の明のある人物の並はずれた業績 と連綿と続くファイナンスの世界におけるその影響力についてわれわれの理解をさら に深めてくれる」――バートン・マルキール(『ウォール街のランダムウォーク』著者)
目次
監修者まえがき序文
まえがき
第1部 證券分析の基礎を築く
第1章 一九四五年 證券アナリストに職業認定は必要か――肯定的な見方
第2章 一九四六年 證券分析における適正性について
第3章 一九四六年 ヒポクラテス式證券分析
第4章 一九四六年 SEC式證券分析
第2部 證券分析を定義する
第5章 一九五二年 證券分析の科学的側面について
第6章 一九五七年 株式評価方法の二つの説例
第7章 一九五八年 株式の新たな投機要因
第8章 一九四六年 特別な状況(スペシャルシチュエーション)
第9章 一九六二年 株式保有の投資妙味
第10章 一九三二年 膨張する国家財政と収縮する株主――企業は株主から搾取しているのか
第11章 一九三二年 企業は余剰資金を株主に返還すべきか
第12章 一九三二年 現金を抱えた負け組企業は清算すべきなのか
第3部 證券分析の領域を広げる
第13章 一九四七年 株主と経営陣の関係についての質問リスト
第14章 一九五四年 企業利益への二重課税を軽減する方法はあるのか
第15章 一九五三年 外部株主に対する統制
第16章 一九五一年 戦時下の経済と株式価値
第17章 一九五五年 完全雇用の実現にのしかかる構造的問題
第18章 一九六二年 米国の国際収支――「沈黙の共謀」
第4部 證券分析の未来を考える
第19章 一九六三年 証券分析の未来
第20章 一九七四年 株式の未来
第21章 一九七六年 ベンジャミン・グレアムとの対談
第22章 一九七二年 ベンジャミン・グレアム――證券分析についての見解
第23章 一九七四年 一九六五年から一九七四年までの一〇年――証券アナリストにとっての重要な意義
第24章 一九七七年 グレアムと過ごした一時間
著者紹介
ベンジャミン・グレアム(Benjamin Graham)ベンジャミン・グレアムはウォール街に多大なる影響を与えた人物であり、近代的証 券安全分析の父として広く認められている。投資会社グレアム・ニューマン社の創業 者および元会長であり、1928年から1957年にわたってコロンビア大学ビジネススクー ルで教鞭をとった。彼はPERをはじめ、負債資本比率、配当実績、簿価、利益成長 などを活用した調査、分析を実用化し、広く世に広めた。彼の代表的な著作には、古 典的大著『証券分析』(パンローリング)や一般投資家に向けた投資ガイド『賢明な る投資家』(パンローリング)がある。
編者紹介
ジェイソン・ツバイク(Jason Zweig)ウォール・ストリート・ジャーナル紙の「インテリジェント・インベスター(賢明な る投資家)」欄のコラムニスト。マネー誌のシニアライターであり、フォーブス誌の 投資信託関連の編集者、タイム誌やCNNのコラムニストでもある。また、ベンジャミ ン・グレアム著『新 賢明なる投資家』(パンローリング)の編著者、『あなたのお金 と投資脳の秘密――神経経済学入門』(日本経済新聞出版社)の著者。ニューヨーク 市在住。
ロドニー・N・サリバン(Rodney N. Sullivan)
CFA(CFA協会認定証券アナリスト)、CFA協会の出版責任者であり、フィナンシャル・ アナリスツ・ジャーナルのほか、多く刊行物にかかわる。なお、トリゴン・ヘルスケ ア社(現アンセム・ヘルスケア社)の調査部長、アリス・コーポレーション社のシニ アポートフォリオアナリストとしての経験もある。バージニア州シャーロッツビル在住