識者の見方=ドル円は失速へ、米金融政策を先取りしすぎた反動で

2013年07月08日 17:30

米系証券シニアストラテジストA氏

 先週末の強い米雇用統計を受けてドル円は101円台まで上昇したが、米金利は来年6月の利上げを織り込む水準まで急伸するなど、明らかに行き過ぎた動きが見られる。米経済にとっても過度な金利上昇は景気拡大に水を差す。米量的緩和(QE)の早期縮小や米利上げなど、マーケットが米金融政策を先取りしすぎている感が強く、ドル主体で101円台まで反発してきたドル円にとっては、金利面から調整余地が拡大しているのではないか。9月か、あるいは12月なのかわからないが、米QE縮小開始がドル円の上昇トレンドの終着点になるかもしれないという心持ちさえある。
 円安の観点からも、ドル円が上値を広げていく展開は見通しにくい。外債投資では、本邦勢の利益確定の外債売りが続いているうえ、貿易収支などの悪化も円売り要因としては力不足。参院選での与党大勝による円安期待もあるが、すでに織り込み済みだろう。日本のファンダメンタルズが改善してきていることも円売りを後退させる要因。今週から来週にかけては中国経済指標の発表が集中しており、中国景気懸念がくすぶっていることからすれば、リスク回避の円買いを警戒すべきか。
 年内、ドル円が5月高値である103円後半を突破するとは見ておらず、年末までには95円程度までの調整余地はあると考えている。与党にしてもこれ以上の円安・ドル高は望んでいないと思われ、ドル買いを仕掛けるなら欧州通貨のほうが有望なのではないか。