【視点】 ECB 追加緩和期待のつなぎとめに成功

2014年04月04日 21:51

第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト・田中 理氏
 
ドラギ総裁がマエストロ襲名 追加緩和期待のつなぎとめに成功
 
 ドラギ総裁は3日のECB理事会で、量的緩和を含む追加緩和措置で理事会の総意が出来ており、深く幅広い議論をしたことを明かし、市場の追加緩和期待をつなぎとめることに成功した。聞き飽きた感もある「行動する準備がある」発言では市場の失望を誘う恐れがあるため、タカ派急先鋒のワイトマン独連銀総裁とも口先介入の強化で協調姿勢を演出。ユーロ高進行を食い止めることで、追加緩和に追い込まれる事態を未然に防ぐ狙いがあったのだろう。
 ECBは量的緩和を排除しないことが理事会の総意であることを明らかにしただけで、実際に量的緩和を行うことをコミットした訳でも、量的緩和の中身で理事会内のコンセンサスが出来ていると言っている訳でもない。ましてや市場参加者の期待が高い国債購入などの本格的な量的緩和に踏み切ることを示唆した訳でもない。ドラギ総裁の巧みな言葉にだまされてはいけない。
 3月の物価下振れはイースター休暇の時期がずれたことによるもので、4月以降の物価上昇率は持ち直す可能性が高い。4月以降も物価の下振れが続かない限り、今回の局面でECBが追加利下げや本格的な量的緩和に踏み切ることはないと予想する。短期金融市場の動揺再燃を受け、年後半にSMP(証券市場プログラム)の不胎化中止やLTRO(長期資金供給オペ)の部分再開などの追加緩和措置に動く可能性がある。