【視点】 CPI悪化で豪ドル急落も、底堅さ取り戻す展開へ

2014年04月24日 16:17

みずほ証券 金融市場調査部  シニアマーケットアナリスト 青山 昌氏
 
CPIの市場予想比悪化で豪ドルは急落も、今後は底堅さを取り戻す展開へ 
 
 昨日発表された豪14年第1四半期CPIが市場予想を下回ったことで、市場の一部にあった年内にもRBAが利上げに動くとの見方が後退し、豪ドルは一時前日比で1%以上急落した。ただし、昨日の安値0.9268ドルは、およそ2週間前の今月8日以来の水準であり、3月末の水準を依然上回っている。
 注目したいのは、豪ドルのボラティリティが安定していたことである。ボラティリティが低下すると金利差を獲得できる期待が高まるため、豪ドルのような高金利通貨を押し上げる要因となりうる。昨日は、豪ドルの急落に対してもボラティリティは上昇しなかったことから、豪ドルの高金利を獲得するニーズは今後徐々に回復してくるだろう。豪ドルは次第に底堅さを取り戻すと考えられる。
 豪ドルの支援材料はボラティリティの低下以外にもある。一つは昨年から続く豪州の貿易収支の改善。収支改善の累積効果が、遅効的に豪ドルの下値を支える状況にある。もう一つは、RBAの声明文。RBAは現在の豪ドルは高水準との見解を引き続き示しているものの、同時に「金利の安定期間を設ける」としており、実際には利下げなどの行動に移さないことを示唆している。
 今後の注目は失業率の動向。失業率は3月に季節調整済みで低下した。基調推計はまだ低下に転じていない。企業の景況感の改善を考慮すると年前半のうちにも基調推計は低下に転じると考えられる。そうなれば、RBAが来年前半にも利上げに動くことを市場は本格的に織り込み始めるだろう。
 ただし、豪ドルとNZドルを比べれば、後者に分があると考えられることに留意したい。ニュージーランドはオーストラリアに先んじて既に利上げに動いている。また、主力の輸出品が鉄鉱石や石炭など鉱物資源中心のオーストラリアに比べ、乳製品や食肉など食料中心のニュージーランドの方が、現在の中国の投資主導から内需主導への構造改革、および食品への安全意識の高まりを捉え、中国の成長を享受しやすいためだ。先進国の高金利通貨として、豪ドルにとどまらずNZドルも投資可能な運用体制の構築を検討したい。