【視点】 リスクなければ経常収支の黒字維持が想定される

2014年04月08日 20:58

IHS・シニアエコノミスト 田口はるみ氏
 
リスクなければ経常収支の黒字維持が想定される
 
 本日、財務省が発表した国際収支統計では、2月の経常収支が6127億円と5カ月ぶりに黒字へ転じた。これは同貿易収支が5534億円の赤字と、アジアが旧正月の時期だったことや輸入の前倒しによって大幅な赤字となった1月分(2兆2354億円の赤字)の反動により赤字額が縮小したところが大きく影響している。季節調整済みの前月比ベースでの輸出の減少は、アジアの祝日のほかに米国の悪天候が要因にあったと思われる。同時に発表された3月上中旬分の貿易統計(速報)では前年比ベースでの輸入の大きな伸びが確認されており、3月の貿易赤字が再び拡大するような兆候が読み取れる。ただ、3月は投資収益も拡大する時期であり、対外証券投資の売り越しも続いていることから、所得収支増加の効果から経常収支の黒字は維持できると想定している。
 今後に関しては基本的に消費増税前の駆け込み需要の反動から輸入の増加が緩やかになり、円安効果のはく落で貿易収支の改善が期待でき、当面は経常収支も黒字傾向が維持できると見ている。ただし、引き続きロシア問題や新興国の景気回復の遅れがリスク要因として残っており、輸出の持ち直しが遅れることで経常収支が赤字に転じやすい状況は続くのではないか。