【焦点】 米国襲う厳冬、経済への影響の正確な見極めは困難

2014年02月14日 14:22

米国襲う厳冬、経済への影響の正確な見極めは困難[ニューヨーク 13日 ロイター]
 
米国経済の過去数カ月の状況をめぐる解釈は、毎度おなじみのパターンをたどっている。すなわち需要が弱まっている可能性を心配した後で、結局は悪天候の結果だと片づけてしまうというものだ。
 
小売りの不振から低調な雇用、さえない鉱工業生産に至るまで、官民の統計や調査、企業発表などはすべて、米国の多くの地域が大雪や例年よりも寒い天候に見舞われたことが響いたとしている。
 
前月比0.4%減と予想外に落ち込んだ1月小売売上高が発表された13日は、天の啓示であるかのように東部沿岸が吹雪となって政府機関が閉鎖され、ジョージア州やメーン州でも大混乱になった。
 
米海洋大気局(NOAA)傘下の国立気候データセンター(NCDC)によると、昨年11月から今年1月までの期間はミシシッピ川以東のほぼすべての州とテキサス、大平原(グレートプレーンズ)地帯のいくつかの州で、平均気温が平年よりも低く、中西部の北側やオハイオ川渓谷はそれぞれ1895年以降で7番目と12番目の厳しい寒さになった。
 
また東部沿岸全域や中西部のいくつかの州では、この期間の降雨・降雪量が平年よりも多かった。
 
ただ、こうした天候が経済活動に及ぼす影響を判定するのは難しい。猛吹雪の中で小売店の客足がどれだけ減ったかを理解するのは比較的容易だが、過去2カ月の雇用がいずれも予想を下回った理由となれば不明瞭さが増す。
 
小売業者の一部は他の要因よりも天候との関連を重視しているとはいえ、企業業績をみると各企業が天候の影響を過大視してそのほかの問題から目をそらしているのではないかと考えたくなる。
 
2000億ドルの資産を運用するルーミス・セイラスの副会長兼ポートフォリオマネジャー、ダン・ファス氏は「米経済の本当の姿を評価する上で、悪天候がどの程度作用しているかを定量化するのは不可能だ。短期間に出てきた経済指標や市場データにくよくよ悩むなとしか言えない」と語った。 
 
方、ヘッジファンドのオメガ・アドバイザーズのスティーブン・アインホーン副会長は「悪天候で昨年第4・四半期の国内総生産(GDP)成長率は約0.4%ポイント下がり、今年第1・四半期も同様に思われる」と述べたが、こうした成長鈍化が第2・四半期の成長ペース加速につながるはずだと見込んでいる。
 
1月の小売売上高では、家具や百貨店、スポーツ用品店などの低調さが際立っていた。これに対して説明が困難なのは、天候に左右されないはずのネット販売を含む非店舗型店の売上高が0.6%減ったことで、経済成長がなおトレンドを下回っていると考える一部の人々を不安にさせている。
 
最近発表されたその他のデータは、悪天候が経済の足を引っ張っているとの見方に沿った内容だ。米供給管理協会(ISM)の1月製造業調査は、荒天が痛手になった部品供給業者の景況感が悪化。1月の自動車販売は軟調で、12月の住宅関連指標も最近の基調よりも弱くなった。
 
企業セクター別でみても寒波の影響は小売り以外にも広がっている。この数週間には、フォード・モーター(F.N: 株価, 企業情報, レポート)や貨物鉄道のCXS(CSX.N: 株価, 企業情報, レポート)、複合企業のインガソール・ランド(IR.N: 株価, 企業情報, レポート)などが相次いで、厳しい寒さが長引いて大雪などによる物流面の問題が重なったために事業に支障が出たと表明した。
 
米連邦準備理事会(FRB)内では、例えばイエレン議長は足元の予想外に弱いデータの一部には悪天候の影響が出ているように見えると発言している。
 
これに対してもう少し懐疑的なのはセントルイス地区連銀のブラード総裁で、13日には「わたしはしばしば、もし経済データから天候関連の要素をもっとうまく除外できれば、よりはっきりと基調的な動きがわかるのにと思ってしまう。(最近のデータに)天候が影響している可能性は相当に強いが、それを知らせてくれる本当に有効なモデルの持ち合わせがない」と述べた。
 
もっともドイツ銀行のエコノミストチームは、源泉徴収額のようなより確かな証拠を挙げて、これが前年比4.5%と1年前とほぼ同じ伸びになっていることから、経済は下振れしていないと推察できるとしている。つまり小売売上高などは季節的な特別の要因の影響を受けているわけで、第2・四半期に景気が持ち直すとするアインホーン氏の見方を裏付けるだろう。
 
投資家も、経済の弱さが冬の終わりとともに去っていく望みを捨てていない。
 
フェデレーテッド・インベスターズのチーフ株式ストラテジスト、フィル・オーランド氏は「われわれは悪天候がもらしている影響を理解しており、第2・四半期に今よりも平年に近い天候が訪れた際には経済が上向くと見込んでいる」と話している。